コールドポリペクトミー (Cold Polypectomy)
以前までは、5mm未満の微小ポリープは切除せずに経過観察すべきとの考えもありましたが、放置した病変(良性腫瘍)は増大する可能性やがん化の可能性があるため、問題の先送りであるともいわれておりました。
コールドポリペクトミーであれば、微小なポリープも患者様の負担なく切除することが可能なため、ポリープを残すことによる病変増大・がん化の不安も軽減されます。さらには、大腸腺腫のポリープを内視鏡切除することで、大腸がん発生率の低下および大腸がん死亡率減少の効果があることを考えると安全に切除が可能なこの治療法は有用であると言えます。しかし、微小ポリープの中には、陥凹型病変も存在し、この陥凹型病変は極初期の癌である可能性も高いので、NBI・色素拡大内視鏡診断を的確に行い、EMRで摘除すべきであります。従って、当院では、必ずNBI・色素拡大内視鏡診断をすべてのポリープに行い、異型度が軽度な腺腫と診断したものは、積極的にコールドポリペクトミーで摘除しております。
【 切除方法 】
cold forceps polypectomy (コールドフォーセプス・ポリペクトミー)
当院では、Jumbo鉗子(デイスポーザブルのポリープ切除専用処置具)を用いて微小病変を切除します。
この鉗子は、通常の生検目的に使用する生検鉗子のカップ容量が2倍以上に大きく設計されたものですので、
大きさ5mm未満の病変には確実に摘除が可能です。摘除のコツは、Jumbo鉗子を全開に開いた状態で使用するのではなく、
病変のサイズに合わせてJumbo鉗子を開き病変をカップ内に包み込むようにして把持してから摘除します。病変の摘除直後には、摘除した粘膜欠損部分に水圧処置(内視鏡用送水ポンプを使用)を行い、粘膜欠損部分への注入により粘膜下膨隆が形成され、水圧による圧迫止血と切除断端の陰性(NBI拡大観察にて判断する)を必ず確認しております。
この確認が重要です。
- 1.NBI観察遠景像:大きさ2mmの平坦な病変
- 2.NBI観察強拡大像:JNET分類type2A
腺腫と診断
- 3.デイスポーザブルのポリープ
切除専用処置具(Jumbo鉗子)を使用
- 4.病変をカップ内に包み込んで
しっかりと把持し摘除します。
- 5.摘除後に粘膜欠損部に水圧処置を行う。
- 6.水圧による圧迫止血とNBI拡大観察にて
切除断端の陰性を確認します。
cold snare polypectomy (コールドスネアポリペクトミー)
1cm未満の小さなポリープをデイスポーザブルのコールドポリペクトミー専用スネア(輪状の細いワイヤー)で絞り、
非通電にてそのまま摘除します。
一般的には、大きさが5mmから10mm未満の非有茎性ポリープでかつNBI・色素拡大内視鏡診断にて
異型度が軽度と診断したものを適応としています。
平坦・陥凹型病変や表面型病変に少しでも陥凹を伴うものは、極初期の癌の可能性があるので、EMRで摘除する必要があります。
病変の摘除直後には、上述と同様な処置を行うことが重要です。
このように、コールドポリペクトミーとは、電流を通さずに非通電で摘除する方法であるので、心臓ペースメーカー装着の方や、
金属製のステントが体内にある方でも、簡便に安全に1cm未満の小さなポリープなら切除することができます。